おら、イギリスさ行くだ

田舎からイギリスのブリストルに引越しました。

思い描いた未来

約3ヶ月の間強いられた窮屈な暮らしでしたが、ついにそれも幕を閉じる日が近づいてきました。今月中旬からは必須のお店以外も再開する事が認められ、街は徐々に明るさを取り戻してきています。

f:id:Nanashinookappa:20200622195425j:image

ブリストルハーバー

 

英国の人々は行列を作ることが上手な国民だと思います。これは日本人もですが、そんな国民性なのだと思います。ヨーロッパの他の国(リトアニアだったかしら…)から英国にやってきた若い女性が、英国に引越して来て列を綺麗に作る人々に感銘を受けたと話してくれた事があります。

日本人にとっては特に何の変哲もない行列なのですが…。この行列もパンデミックの騒ぎで精度が上がり、きっちり2メートルずつ間隔をあけて並ぶようにガイドラインが引かれ、人々は約3ヶ月の間にますます整然とした美しい行列を作り始めるようになりました。まるでロボットだと皮肉を言って笑いながらもその線をはみ出さないようしっかりと規律を守っています。

 

おかっぱには、約15年前から度々描いている近未来をイメージした絵のシリーズがあります。そのイメージは現在の状況に少し近いような気がします。

ある時スーパーで買い物中に、店員さんがレジでバーコードを読み取っていくのをぼんやりと眺めながら思ったのです。商品に与えられた名前がバーコードであるならば、人間の名前もそのうちバーコードになっても不思議ではない…。

 

そもそも以前からその傾向はありました。プライバシー保護や医療ミス防止の観点からは非常に良いシステムですが、大きな病院に行った時などは最初から最後まで数字になった気分です。入院でもしたなら手首にバーコードの腕輪が取り付けられて度々バーコードを読み取られてから治療が始まります。

人間の名前がバーコードになったなら…。全員が手にバーコードの刺青でもして、電車に乗る時にはその手を改札にかざし、それが読み取られてそのまま電車に乗れる時代が来たりはしないだろうか…と想像しました。定期券を忘れる心配はありません。

f:id:Nanashinookappa:20200622183510j:image

蔵を改装したカフェへ搬入の様子

 

ところが、そんな便利な世の中を思い描くと人間の体温や感情の感じられない、色のない世界がイメージされました。おかっぱはこれを知らせないと皆がバーコードになってしまうような妙な危機感に襲われ、バーコードを収集して絵を描き始めました。

 

バーコードがより機械的になった人間の姿のように思えたのでした。それが「規制」であり、それを塗りつぶすことは規制からの脱却です。そこに描いた動物は従来こうでなくてはならないとされていた姿ではない、進化した生き物でした。

 

この英国のパンデミックの産物とも言える、整いすぎた行列がその「規制からの脱却」の記憶とリンクしました。

 

まだこの騒ぎも完全に終息はしていないので、しばらくはこのまま整った行列を維持した方が良いとは思うのですが、この騒ぎが収まっても人々の色や温度がずっと戻ってこなかったら、どうしましょう!

例えば皆がバーコードになったなら…。

そこに残る人間らしさとは一体何なのでしょう。

f:id:Nanashinookappa:20200623012345j:image

A colourful fish ©️2018 Nanashinookappa

 

ロックダウン前の生活が真っ白に塗り潰された世界。そこに皆で描く新しい世界が楽しみでもあり、カルチャーショックに打ちのめされる不安も少々あるような、無いような…。

 

へば、まんず!

(秋田弁: それではこの辺で!)