おら、イギリスさ行くだ

田舎からイギリスのブリストルに引越しました。

影が作る光

夏は悲しい季節です。

夏が終わる頃、カレンダー上では秋の初めころに友人が亡くなりました。かれこれ18年にもなるのですが、なかなか清算できずに夏は嫌な季節だと感じたままです。

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その友人は少しだけ遠くに住んでいたのですが、度々お互いを訪ねたり一緒に遠出したりしていて姉妹のように必ず繋がっているような友人でした。

明るく、友達もたくさんいて、職場でも上手くいっていたようですが、おかっぱはある時、彼女が心配になるような事に気が付き、それについて彼女と話した事がありました。ある日、彼女の携帯電話から電話がかかってきていて変な時間だったので出そびれてしまいました。留守番電話が残されていて嫌な予感がしたのですが、予感とは時に残酷過ぎるほど的中してしまうことがあるのです…。

留守番電話は彼女のお母さんからでした。

 

東京から彼女の実家へと向かい、葬儀に出ました。彼女の友達は誰も葬儀に出ておらず、近い親戚とお父さんの職場の同僚が何人か線香をあげに来ただけでした。

彼女は統合失調症と診断され、その症状で苦しんでいたのですが誰にも相談できず、周りの人に心配させるようなことのないよう振舞っていたようです。後に解ったのは、それを知っていたのはおかっぱと彼女が異変を感じて通った心療内科の医師だけだったということです…。

 

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もちろんご両親も知らず、警察から彼女が亡くなったという連絡を受けて彼女の暮らしていた都市へ向かったそうです。その現場に残されていたノートにおかっぱの名前が大切な人としてフルネームで書かれていたのでご両親が彼女の携帯電話や彼女が残したものを駆使しておかっぱを探し当てたようでした。

 

これは様々な悪条件が重なって起こった事故のような気がします…。18年経っても記憶は色褪せることがなく、鮮明になっていく部分もあります。やっと現実として受け止められたということなのかも知れません。

友人は亡くなる数時間前におかっぱにメッセージを送って来ていました。何もおかしいと感じるような要素のないメッセージでした。

気づいた時にメッセージを返信しましたが、おそらくそれを読む前に亡くなっていたと思います。もっと早く気がついて返信していたら…その時電話をかけていたら違う未来があったのでしょうか…。

今更そう思ったところで彼女が戻ってくるわけではないのですが、18年経っても本当に悔しく思うのです。夏と共にそんな思いが必ずどこかから飛んで来て夏が終わるまで心の片隅に居座るのです。

 

精神疾患やストレスなどの心の不調とは、誰がどう見ても身体のどこかが悪そうだと思われるパターンとは違う意味でタチが悪い病のような気がします。

タブー視されがちで誰にも気が付かれないまま苦しみ続けることもあるでしょう。身体は動くのに脳がエラーを出してしまうというのはタイミングが悪ければおかっぱの友人のように最悪の「事故」を招いてしまう事もあるかと思います。

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光もあれば影もあるのがこの世の中で、影を見ないと光は描けません。夏は、どこまでも眩しく高い空が影を照らしきってしまって光を感じさせなくさせているような気分になり、これは現実なのかと疑って少し悲しくなってしまう時があります。友人がまだどこかにいて遠くに住んでいるような有りもしない事を考える現実逃避をさせられているような気分とでも言いますか…。

 

英国ではそんな灼熱の夏などほんの数日間しかありません。その数日間が過ぎれば、どんよりと低い雲がやって来て霧のような雨が降り、全ての色が戻ってきたようで少し安心するのです。

 

それでも少し遠くから故郷を眺め、違う夏を感じる間にわずかな夏の時間を貴重な光と感じられるようになってきたような気がします。

もう夏も終わりのような涼しい英国、ブリストル村より。

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へば、まんず!

(秋田弁: それでは、この辺で!)