おら、イギリスさ行くだ

田舎からイギリスのブリストルに引越しました。

野生の感性

ロックダウンの間にすっかり習慣になった散歩も4ヶ月近くも続けるとすっかり周りの様子が移り変わったのを感じます。

ロックダウンが始まった頃はまだ春が始まったばかりで英国の春を告げる花、ブルーベルの季節でした。それから様々な花が咲き始め、終わり、実がなり、季節は少しずつ夏から秋へ向かっていこうとしています。

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厳しいロックダウン中にもあまり人のいなかった森は今も近所の子供や犬の散歩をする人々と時々すれ違うくらいで静かです。人とすれ違う時にも皆、律儀に譲り合い、なるべく近くをすれ違わずに済むように横にずれて相手が通り過ぎるのを待ちます。

ブリストルの人々は普段から譲り合いの精神が染み付いているように思いますが、最近はさらに大袈裟に距離を保ち、まるで世界は変わってしまったのだと念を押されているような気分です。

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森の中で前方からプラスチックの容器を大切そうに持つ3人組の子供たちがやって来ました。子供達はケガをしているネズミを助けたと喜んでいます。見せてもらうとネズミではなくラットのようで、足が一本奇形で生まれたか、随分前にケガをしたラットのようでした。大きさからして、生まれたばかりではなさそうでした。

子供たちは興奮しながらおかっぱと相方に何を食べさせたらいいのかと色々とアイディアを話して去って行きました。おかっぱは相方に、そのままにしておくと生き残れないかもしれないけれど、自然の生き物だからかわいそうだけれど森の中にいた方が良かったかもね…などと話しながらしばらく森の散歩を続けました。

相方は以前ラットを飼っていたのですが、ペットショップから来たラットだったので野生動物とは事情が違います。とても懐っこく、賢かったそうです。
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森をしばらく歩いていると先ほどの子供たちが少し寂しそうな表情で空っぽの容器を持ってまた近くに来ました。ラットを森へ返してきたそうです。3人でよく話し合って森へ返す事にしたようです。

相方は子供たちに、He will surviveと言っていました。子供たちもそれに相づちを打ち、また少し覇気のある表情に戻りました。

子供たちも自然の中でそんなに簡単には生きられないと知っているのかも知れません。それでも、人間は手を出してはいけない自然の世界もあると決断をしたのだと思います。

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森を出て帰宅する途中、地面にさくらんぼがたくさん落ちていました。上を見上げると木にさくらんぼが沢山…。周りを見渡しても個人の所有物ではなさそうですし、誰も採っていないようです。落ちたさくらんぼを鳥が時々ついばみにやって来るだけです。その横には煉瓦の塀のようなものがあり、おかっぱはそこによじ登って数個採って味見をしました。鳥が食べているのを見て毒はないだろうと飛びついたおかっぱでしたが、相方は本当に食べられるのかと心配そうに見ていました。

 

相方にさくらんぼを手渡しながら、もしもこのパンデミック以上の何かが起こってスーパーも何もかも閉まっても、どこに食べ物があるかわかったら生き延びられるじゃない!と言うと、相方は受け取ったさくらんぼを恐る恐る食べました。

 

そして、足の不自由なラットの事をふと思い出しました。相方は子供達を悲しませないようにHe will surviveと言ったのだと思っていましたが、ただの気休めではなく人間より優れた野生の感性で「本当に」生き延びられる奇跡もあるのかも知れない…と思ったのでした。

 

へば、まんず!

(秋田弁: それでは、この辺で!)